大島先生: はい、その理解で問題ないです。ONGは次世代育成オフィス、Office for the Next Generationの略です。2つ柱があり、1つは科学技術と社会のつながり。もうひとつは、小中高の方々が学校で習っている教科と科学技術のつながり。そのようなつながりを実感して、個々の学びに生かしていただくための活動を展開しています。課題解決型のワークショップや出張事業を含めて、さまざまな学びの形態、および場を提供しています。
大島先生: そうですね。やはり私たちの社会は解答が1つというわけではなく、また、解自体がないこともあるので、そのようなことを考えていただくのが大事ですね。最近よく言われる「ワクワクして」「楽しんで」、いろいろと自分なりの学びを行っていただくと良いと思います。ですので、そのための活動やさまざまな教材を開発して、フィードバックを受けながら、私たち自身も学びながら進化していく活動を実践しております。 お互いに刺激しあう、いわゆるプラットフォームのような形態をとっていますので、その場にみなさまが集まることにより、それこそワクワクしながら、新しいなものを作り出していこう、ということがコンセプトです。
川越先生: 私たちは大学で教育および研究に携わっているので、創造性教育を行うこと、そして大学がこういう形で初等・中等教育に携わってゆくことが大きな役割だと思っています。今回、新しい知の創造、社会的価値の創造を積極的にやっていこうという思いを込めて、UTokyoGSCのプログラムを作成しました。
川越先生: UTokyoGSCは2段階のプログラムになっています。分析や研究には数学を使うので、第一段階ではまず基礎学習として、統計や微分積分、線形代数など、高校の授業から大学の学部生が習う入口のところまでを学習してもらいます。データを解釈するときには統計を必ず使います。誤差をどう見積もるかなど、研究活動を行う上で必要な知識ですので、学習を進めていきます。
川越先生: 算出までは難しいと思いますが、正規分布の概要の話をして、データの見方を知ってもらうプログラムを設けています。次のプログラムとしてはSTEAM型学習を実践しています。東京大学のさまざまな最先端研究を実際に講義で聞いて、受講生同士でディスカッションをするものです。
このプログラムでは、受講生がグループに分かれ、先生方による研究の講義を受けます。その後、異なる講義を受けた受講生たちが集まって、 講義内容を受講生同士で教え合い、理解を深めていきます。実際の研究はどのようなものなのか、また社会的な課題や学術的な課題にどのように取り組んでいるのかを知ってもらう機会になっています。
ここまででは基礎学習と最先端の講義とでかなりのギャップがあるので、次のSTEAM型価値創造ワークショップでは、実際に高校生が自分自身で取り組みたい研究テーマについて、今自分たちが考えているところからそれが研究になるまでにどのような考え方でつなげていけば良いのかを練り、自分が取り組みたい研究を具体化していきます。そして、最後にワークショップで練った自分の研究提案を発表する成果発表会があり、ここまでが第一段階です。
川越先生: 第一段階の受講生に研究提案書を提出いただき、書類審査を行います。その後、面接審査を行い、合格した受講生が第二段階に進みます。この第二段階は「創造性を形にする」もので、研究テーマに応じた東京大学の研究室にて、直接指導を受けながら研究活動を行うものです。研究室の先生方とディスカッションをして、実施できる研究に落とし込みながら、受講生が自分でテーマを持って研究していく活動です。
大島先生: 課題解決型研究で一番難しいのは、自分が解ける課題にどのように落とし込むかという点ではないかと思っています。そのような意味で、まず自分が持っている知識をきちんと把握すること。いま持っている知識と解きたいテーマにはギャップがあるはずなので、それをどのように埋めていくかを把握しながら、解ける問題にまで落とし込むということに第一段階では注力しています。第一段階から第二段階に進む時には研究提案書を書いていただきますが、提案書ではテーマ設定や課題の把握などの点について重視して審査しています。
やはり研究課題にどのように落とし込むかが大事だと思っています。その点に関して、私たちはある程度サポートをしますが、ご自身で考えていただくことを重視していますね。
川越先生: 壮大なテーマをバンと提示する生徒さんもいますが、ワークショップを通して、壮大な目標に到達するまでの道のりにどのようなことが考えられるかを少しずつ埋めていくプロセスをとっています。その道のりを見たときに、自分はどの部分に取り組むのか落とし込める受講生と、そうでない受講生がどうしてもいるのが実際のところです。もし研究提案書でうまく落とし込めなかった場合には、補強段階というプログラムでもう少し具体化できないか提案したり、面接審査時にどこに一番フォーカスを置いているのかを直接聞いたりしています。 壮大なテーマだから駄目というわけではなく、少しずつ自分ごととして具体化するサポートをするようにしています。
大島先生: そのようになると嬉しいです。UTokyoGSCは限られた時間の中で研究を行うことになるので、うまくいく場合もうまくいかない場合もあると思います。しかし、うまくいかなかったとしても、それを次につなげることが大事ですね。どうしてうまくいかなかったかを考えて、とにかくやりきる。そして振り返って次につなげるということを大事にしています。 みなさま学校との両立があり、学校でも勉強だけではなく、クラブ活動等もあるので、個々の受講生が自分のペースで、自分なりの成果を上げることができれば良いと思います。そのように考えて、みなさんにはやり遂げていただきたいです。
大島先生: いけばなの美しさを数学的な手法で分析した研究は特に面白かったですね。私たちのような研究者では気づきにくい、身近ないけばなに着目されていました。感心したのは、いけばなは3次元空間の表現と思っていましたが、鑑賞者の視点から2次元空間でどのように見やすくするかという所に着眼して問題を落とし込んでいて、高校生としては素晴らしいなと思いました。着想力と、ある程度解ける問題に条件を加味して取り組んでいるのには本当に感心しました。
川越先生: このプログラムでは、応募書類としてレポートを書いてもらいますが、合格ギリギリのレベルでレポートを書いていた受講生が第二段階で良い研究をしている場合もあれば、第一段階では比較的良いレポートを書いているけれども、そこから急激な変化がない受講生もいます。 ですので、最初の段階は違っていても、将来的に意欲や能力のある生徒さんをどのように選抜するかについては、いろいろな視点や観点を日々検討しないと難しいということが気づきかもしれません。受講生の育成具合はフォローしていますので、しっかり見ていきたいと思っています。
大島先生: 個人的な思いですが、学びというのは、自分が学ぶことも大事ですが、教えるということも非常に大事な要素です。教えることによって、自分で学んだことが定着することもあります。大学あるいは社会に出たときに、この経験を生かして、ぜひ今度は自分が教える側になっていただきたいです。 卒業生が今度はチューターとしてUTokyoGSCに来ていただければ嬉しいですね。ロールモデルとしてUTokyoGSCでの経験を広めていただくことも大事だと思います。
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テクテク編集部あとがき
UTokyoGSCは東京大学で最先端研究を行っている先生方とコミュニケーションし、アドバイスを受けながら、学びが深められる絶好の機会であると理解した一方で、「自分が解ける問題まで落とし込むことが課題解決には重要」という大島先生のことばに感銘を受けました。自分たちが持っている知識を整理してレーティングし、解決課題とのギャップをどう埋めるかに知恵をめぐらせるべきという考え方は、多くの人にとって参考になるになるのではないでしょうか。そしてこのようなトレーニングの経験がある10代が増えていけば、日本の将来は相当に明るいと思えて仕方ありません。